中国人訪日市場2 地方の受入環境整備が課題に
前回から引き続き、急速に回復している訪日中国人旅行者の市場動向について解説したいと思います。団体旅行のイメージが強い中国人旅行者ですが、実はコロナ禍前2019年10―12月期にはすでに個人旅行者が約7割を占めていました。その後、2023年同月期の時点で個別手配での旅行が95%となり、市場は団体旅行から個人旅行へ完全にシフトしています。
この変化の背景には、中国旅行市場の成熟化により、個々の旅行スタイルの好みが多様化していることが大きく影響しています。実際、訪日中国人旅行者の同行者構成も「ひとり」の割合が約1割から約3割へと増加しており、その一方で「友人・知人」の割合は約3割から約2割に減少しています。また、子どもがいる旅行者は、子どもがいない旅行者に比べて消費額が倍になり、今後は「子ども連れの家族旅行」が重要な市場となりそうです。
訪日中国人旅行者のリピート率が年々向上する中、ハードリピーターはより自由で柔軟な旅行スタイルを地方に求めています。有名観光地や都市部での混雑を避け、静かでまだ誰にもあまり知られていないような場所を訪れようとする傾向が強くなっているのです。その証左の一つとして「WeChat=微信(中国国内を中心に約13・6億人もの月間ユーザーを抱える世界最大規模のSNS)」の2024年に掲載された国や地域、自治体の観光局や観光協会が発信した記事の中でもっとも閲覧されたのが、日本政府観光局(JNTO)の「日本の最も美しい小さな町10選」でした。記事では北海道から沖縄県までの小さな町が特集されているのですが「都会の喧騒から離れ、静かな場所を訪れたい」という中国の個人旅行トレンドに記事の特集がう
まく合致したと言えるでしょう…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2025年3月25日号)
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