中小旅行会社の役割 観光流通インフラの再構築
現在、訪日外国人旅行者数は毎月のように過去最高値を突破しており、日本のインバウンド市場は絶好調だと言えます。しかし、その裏で日本の主要旅行業者による「訪日外国人旅行」の取扱額は、いまだ2019年を下回ったままなのはなぜなのでしょうか。
その答えは明白で、インバウンド市場の構造が根本から変わったことにあります。特にコロナ禍前までは、大手旅行会社が空港から団体客を迎えてバスに乗せ、有名観光地を回って、免税店に連れていく「三種の神器」型モデルが主流でした。しかし、今の訪日外国人旅行者の大半は、自分で航空券を取り、ホテルを選び、現地で体験を予約しています。旅行会社のパッケージツアーを利用せず、各地で「自分だけの旅」を楽しんでいるのです。海外からの旅行者は年々増えているにも関わらず、主要旅行会社の売上は増えないという現象が起きるのは当然なのです。
さらに、旅の中身も変わり、大量消費・爆買い型の「モノ消費」から、体験・学び・交流といった「コト消費」へ大きくシフトしました。訪日リピーターの多くは、地方へと足を運び、自然や文化を体感する旅に価値を見出しています。この流れの変化にこそ、地方の観光地が進むべき方向性が見えています。
そして注目すべきは、全国旅行業協会(ANTA)にインバウンド専門の中小旅行会社の加盟が増えていることです。大手が構造改革に手間取る間に、現場で汗をかき、地域と連携し、世界と直接つながる中小事業者が着実に力を付けているのです…
(山田桂一郎=まちづくり観光研究所主席研究員)
(トラベルニュースat 2025年6月25日号)
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