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夜目遠目笠の内 紅葉見ごろ論

2018年11月9日(金) 11月上旬が紅葉見ごろの温泉に宿泊。紅葉名所が谷間の日陰にあり、見ごろが遅れると考え意図的に遅めで予約しました。1週間前にも下見に訪れ、色付きが浅いことを確認。宿泊当日が見ごろだと確信したのですが、そのわずか3日後に偶然県の観光サイトを見たら「色褪せ始め」と掲載されており愕然としました。

ドキドキしながら当日を迎えた結果はご覧の通り。まさに見ごろの最盛期で、なぜ4日以上も前に「色褪せ始め」と発表したのか、まったく理解できません。宿泊予約済みの私には選択肢はありませんが、大勢の日帰り客が行き先を変更したに違いありません。日本を代表する紅葉の名所なら、少しの色褪せも許せないプライドは理解できます。しかし、温泉は有名でも紅葉は県のサイトでしか見ごろを発表していない穴場なのですから、おおらかに対応していただきたいものです。

今やインスタ映え全盛で、写真は「盛る」のが当たり前。観光地でスマホのシャッターを押すよう依頼され、暗く写ったのでもう1枚と提案しても、後で画像加工して調整するから大丈夫と平気で断られる時代です。その上に美肌はもちろん、アプリで顔を小顔にしたり目を大きくしたり自由自在。プロも同様で「葉さえ付いていれば紅葉写真を思い通りに仕上げられる」と豪語する風景写真家もいるという。そんな時代に「色褪せ始め」と発表する意味は少なく、見ごろの次は「散り始め」を発表すべきと提言させていただきます。

紅葉は一般的に、先行して紅葉する木が赤くなった時が最初の見ごろ。次にもみじの紅葉が本格化し、最後に大半の木が紅葉して全山オレンジ色に染まります。厳密には樹木の品種ごとに見ごろ時期は異なりますが、大雑把に分けてもこのように3度の見ごろがあるわけです…

(藤田聡=温泉研究家)

(トラベルニュースat 2018年11月25日号)

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