繁忙期に休む宿 仙仁温泉岩の湯(長野県)
6月5日(水) 一生に一度は泊まりたいと、仙仁温泉に長年憧れていましたが、人間いつ死ぬか分からないので、今回思い切って宿泊。1年先までほぼ満室が続き、直前では日程も客室も選択肢は少なく、キャンセルが出た部屋を予約して万障繰り合わせて行く必要があります。
同様に予約困難な宿はほかにもありますが、年間30日以上も全館休業日がある旅館は唯一無二でしょう。しかも、盆暮れ正月クリスマスという書き入れ時が定休日。休むべき時に休んだ従業員がもてなすことで、顧客が満足するという社長のポリシーです。
館内にはライブラリーを兼ねた休憩所が多数点在し、ロビーと喫茶室を含め10カ所ほど。ほかに大浴場と4つの貸切風呂があるので、全18室の客が一斉に部屋から出ても専有してくつろげる場所をどこかに発見できます。同様に無数にあるのがトイレで、随時用を足せるのでトイレが近い高齢者も安心。いたるところに飾られた生花の総数も実に200以上。パブリックスペースを重視する宿の姿勢が明らかで、本当に気に入りました。
館内の風情も素晴らしく、どこを撮影しても絵になります。帰宅後に確認すると、宿の公式パンフかと思うような写真ばかり。カメラの腕前が上達したと錯覚しますが、モデルである宿の実力です。
インスタ映え大流行の昨今ですが、先見の明で地道に整備を続けた努力の結晶。ほかの宿では、もう少し頑張ってほしいと思うことが多いだけに、最大級の賛辞を送ります…
(藤田聡=温泉研究家)
(トラベルニュースat 2019年6月25日号)
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