「調理師の掌握」&「小旅館の企画商品」
前々回の主役・紀の国会館には見学研修客が絶えず、富士原支配人は地元新聞に「経営の神サン」と取り上げられ、86年、南紀大地にオープンした大規模年金保養基地「グリーンピア南紀」の常務理事総支配人に迎えられました。民間ホテル旅館を含めてもトップクラスの経営者である氏の移籍に、調理部門の二番手が、どうしても自分もついて行く、と言って仲間と水杯を交わして同行しました。そこまで調理師を惹きつけた富士原氏の努力を紹介します。
理論理屈では調理師に負けないようにと、市場に足を運んで仲買人の買い方を見学勉強し、ベテランの魚屋から魚に関する知識を教わった。米については、全国の美味しいといわれる米を比較した結果、地元の紀の川筋産の米が最高との結論に達した。冷蔵庫の種類や性能も勉強し、調理師に教えた。こうして、ある面では調理師に負けない知識を身につけたことが第一ステップ。
次に、例えばおでんについて研究し、調理師はどうしても自分の使いやすいものを使いたがる傾向になりがちでマンネリ化しやすいので、味噌を一種類でなく混合して使うなどアドバイスし、思い切った材料の見直しもさせた。
京都、大阪の一流店には始終、試食研修に同行し、必ず一品を作らせ試食の上、商品化するよう義務付けた。4千円以上の宴会料理は献立を控えておき、同じ客に二度と同じ料理を出さない。宴席には調理師の名前入り献立表を添える、等。
87年、福島県土湯温泉で直扱い客が95%を占めるという130人収容の小旅館・岩城屋の話です。
昼間、電話番をしながら、ご主人は毎日の新聞広告のキャッチコピーをスクラップブックにし、それを見ながら、企画商品づくりのヒントを探します…
(佐藤陸雄=元リーコ代表取締役)
(トラベルニュースat 2022年4月10日号)
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