流れた「RYOKAN」
2000年6月、日観協(日本観光協会)によって、ISO(国際標準化機構。世界共通の標準規格を制定する非政府組織)の「宿泊施設用語定義集」に「旅館」を加えることを検討する委員会が設けられた。
立教大学の岡本伸之先生が委員長で、委員は旅館から大西雅之氏、ほか旅館団体専務理事X氏等十数人。私も。
配布された用語集は英語、フランス語、ドイツ語で名称と簡単な説明が記載されており「宿泊施設」の英語は、日本語読みでホテル、イン、ゲストハウス、ペンション、アパートホテル、ユースホステル、モテル、キャビン等々。いずれも3―4行、15―20文字の簡易説明付きでまとめられている。
2回の討議の結果、英語で旅館を「RYOKAN」と表記することに全員一致で即決し、旅館の概要の説明英文は岡本先生に「佐藤さんにお任せしたい」と言われ、日本の企業のアメリカ支社長をやっている中学時代の親友を相談相手にメール交信の結果、一番わかりやすいと思う「ジャパニーズスタイルホテル」を頭に。後ろに「フトンベッド、タタミフロア」、「共同浴場」「2食付きが多い」等を加えた形で原案提出。1人を除き委員は全員了承したが、「ジャパニーズスタイルホテル」に、「旅館はホテルじゃない!」の一点張りで旅館団体の?氏が猛反対。館名に「ホテル」が入った旅館も珍しくないのに。
最後は任された私と二人で日観協の事務所で論じ合ったが、X氏は一歩も譲らない。私も他にふさわしい言葉は浮かばない。日観協の担当者は私に「すみません」と謝るけど。
で、結局「RYOKAN」のISO宿泊用語定義集入りはお流れとなる…
(佐藤陸雄=元リーコ代表取締役)
(トラベルニュースat 2024年6月10日号)
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