旅行業・新しいビジネスモデルの確立 JATA経営フォーラム08から(4)
分科会Bは、若者が目指す旅行業にするための方策について話し合われた。モデレーターはツーリズム。マーケティング研究所の丸山千春さん、コメンテーターは近畿日本ツーリスト経営戦略課長の近藤亜子さん、ディスコR&M担当部長の志賀信也さん、西武トラベル総務部係長の所洋介さんが務めた。
若者が目指す産業に―ブランド向上を図る 分科会B
旅行業界は今、かつてない人材難に陥っている。後継者がなく、やむなく廃業する小規模・零細の旅行会社は少なくないが、規模の大小に関わらず業界全体の構造になりつつある、と志賀さんは指摘した。
端的な例として志賀さんは、マスコミが毎年公開している大学生の就職ランキングを示した。
2004年の新卒者就職ランキングで文系1位だったJTBは年々順位を下げ、07年には15位になった。女子学生だけでは2位と高位を保っているが、男子学生では50位以下でランキング対象外になってしまった。
近藤さんは「弊社ももともと女子学生のエントリー数が多かったのですが、08年のエントリー数は男子学生の3倍にまで開いてしまいました」という。会社からは採用人員の男女比を半々にするよう言われているが、面接は女子学生の方がそつなく「苦労しています」。
男子学生の志望者減を近藤さんは、インターネットの隆盛などに伴う旅行業の「先行き不透明感」や「低収益性からくる待遇不安」「海外旅行への関心の薄れ」などを要因にあげ、結果として「旅行会社のブランド低下」を招いていると話した。
西武トラベルでは、面接時に会社の弱み、悪い部分を学生にさらけ出しているという。所さんは「会社と学生さんはイーブンの関係ですよとアピールし、我々が求める人物像を具体的に示しています」。9・11以降の海外旅行低迷などネガティブ情報の開示は、学生の信頼を得ることにつながったと、所さんはみている。
一方、丸山さんは「かつて旅行業は消費型の雇用スタイルでした。欠員補充にとどまり、将来の幹部が育成できていない」と、就職後の定着率の低さについて問題提起。
西武トラベルでは、入社3カ月後にフォローアップ研修を行い、職場のコミュニケーションや労働条件、業務知識について質問する。「友人に当社への就職を勧められるか」という問いも投げかけ、改善点を浮き彫りにするよう努めている。
KNTでも入社半年後に研修を行っている。近藤さんは「辞める理由も、続ける理由も現場にあります。若い社員は特に、自分が上司に見られているかどうかに敏感です。そのため、管理職に社員と毎日1回以上のコミュニケーションをするよう促しているほか、1対1でミーティングをして若い社員の疎外感を取り除くようにしています」。
志賀さんは「採用は、入口だけの問題ではありません。仕事の面白さをどう伝えるか。その後を視野に入れた採用方法が大切です」と話していた。
(トラベルニュースat 08年3月10日号)