日本ひとり負け 国際観光大幅減から反転攻勢への方策は(2)
シンポジウムでは国内外から講師を招き、日本の国際観光の現状や世界の観光動向、成功事例、国内観光の状況などを紹介。複数の視点から日本の国際観光促進へのヒントを洗い出した。
観光庁とUNWTO、シンポジウムで探る
「日本はひとり負けに近い」と報告したのは、今回のモデレーターを務めたツーリズム・マーケティング研究所代表取締役の高松正人さん。昨年と今年1―3月の入国者数の増減率を比較すると、韓国や台湾は不況下でも増加したのに対し、日本は30%近く減少したと報告した。これはアジアの中で最大級の下げ幅だという。
加えて旅行市場全体の低迷は、円高など経済状況やインフルエンザ流行国のイメージ定着などが複合的に絡み合ったことが背景にあると指摘。しかし世界には不況下でも成長を続け、旅行者誘致に成功している観光地があることを挙げ「成功の背景や復活への取り組みを知り、国際観光競争力強化のために国や地域、事業者がそれぞれの立場ですべきことを考えるべき」と問題提起した。
基調講演ではUNWTOツーリズム市場調査部副部長のサンドラ・カルボンさんが、世界の観光動向の現状と今後を話した。国際観光客数は昨年急激に減速、現在も低迷が続いているが、湾岸戦争のような過去の危機でも一定期間で回復しており、長期的な見通しは明るいと分析した。
カルボンさんは「旅行者は旅行をやめるのではなく、時期を遅らせているだけ。時期はまだ予測できないが今後強い揺り戻しが見込まれる」とし、危機への対応策として経済政策、雇用の強化のほか、グリーン経済への対応がカギになると話した。
次いで、問題提起を受ける形で国内外の成功事例などを3氏が講演。
海外の事例として、香港政府観光局日本・韓国地区局長の加納國雄さんが、中国返還後の不況などの危機を乗り越え、入国者数を伸ばしてきた香港の元気の理由を紹介した。政府は旅行産業を重要産業に指定し予算を増やしたほか官民の連携を強化、政府観光局は2都市間相互キャンペーンを大切にするマーケティング戦略で危機を好機に変えていったという。
国内観光はじゃらんリサーチセンター・センター長の沢登次彦さんが、国内の元気な観光地の取り組み事例を取り上げ、社会貢献や都市と地方との交流といった要素を今後の地域観光活性化のキーワードに挙げた。
桜美林大学教授の鈴木勝さんは、「海外から学ぶ日本のインバウンド」として、渡航緩和政策の導入や人材育成などの手法を挙げながら、国民全体が訪日客への受入姿勢を向上させることが最大のポイントだと提言した。
(トラベルニュースat 09年9月25日号)
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