日本ひとり負け 国際観光大幅減から反転攻勢への方策は(3)
続いてシンポジウムの総括としてパネルディスカッションが開かれ、高松さんをモデレーターに、講演した4氏が「今、日本のツーリズムがなすべきことは何か」をテーマに議論。(1)デスティネーションとしての日本の魅力(2)日本への行きやすさ(国内宿泊旅行のしやすさ)を考えながら、日本の国際観光の活性化への方策を探った。
高コストの印象、訪日客への理解不足・・・まずは市場の直視を
観光地としての日本の魅力について、カルボンさんは海外の視点から「伝統文化、先端技術など魅力豊かだが、世界ではそれが観光地として捉えられていない。安全で国内交通の充実など利点もあるが、高コストのイメージが強すぎる。政府のPR力が問われている」と話し、魅力はあるが国際観光地として未成熟という見方を示した。
加納さんも「香港から見ると日本は"夢の国"なのに、魅力をもてあましている。表現に問題があり、生活に根ざした日本人のありのままの姿が伝えることが大切なのでは」と提言。「地域の魅力が、どのターゲットにいきるか考えて戦略を立てるべき」(沢登さん)、「多様な魅力を訪日客に伝える努力が根本的に足りていない」(鈴木さん)など、魅力は豊富だが生かせていないという意見が相次いだ。
これを受けて高松さんは、インバウンドが低迷している原因は不況やインフルエンザだけでなく、何か阻害要因があるのでは、と投げかけた。
訪日客への理解不足を指摘したのは加納さん。「日本は県や市単位でアピールする"点"の考え方が強いが、訪日客は"面"でしか受け取れない。また、ホスピタリティは個人はまだしも施設単位になると強制的に『○○するな』という案内が増える。これでは『来るな』と言われているように感じてしまう」。
鈴木さんは「費用面の高さを払拭する努力をしていない」、沢登さんは「そこでしか体験できないものを育てることが必要」と話し、カルボンさんは「訪日客が求めるものを勝手に決めつけている側面もあるのでは」と想定。「近隣国の例などを参考にしながら市場を真剣に見る。そして正しいセグメンテーションをもって情報発信をするべき」と提案した。
魅力を磨くため、阻害要因を取り除くための方策として、行政面では「日本特有の縦社会から横社会に変え、点から面への取り組みを強化する」(加納さん)、地域面では「新しいことに数多く挑戦する、"打率"から"打数"にこだわる市場を目指す」(沢登さん)、事業者としては「旅行会社がインバウンドで収益が上がる仕組みを早期に構築すべき。現地を知り、ニーズを知る努力を」(鈴木さん)とした。
最後に高松さんは、魅力向上・戦略面では国際的に魅力的な観光地づくりや広域観光のPR、人材育成、訪日旅行の促進については官民連携のプロモーション強化や情報発信のあり方の改善、横の連携による課題改善などを取り組むべき施策としてまとめ、議論を総括した。
(トラベルニュースat 09年9月25日号)