誘致のカギは地域力 Japan Mice Year記念シンポ(3)
MICEイヤー記念シンポジウムで最後に講演した日本政府観光局(JNTO)上海事務所の鈴木克明所長は、上海のインセンティブ市場の動向について話した。
MICE対応ビザ創設を
JNTO上海事務所が関与した2009年の訪日インセンティブ件数は08年比19.3%増の68件、人数では同32.0%増の4259人だった。主催者は電器量販店や教育労組、大学の先生、日用品製造販売会社など。1件あたり平均すると20―40人で、最少は8人、最大で1524人だった。日程は4―9日が一般的。半分以上が大阪―京都―名古屋―富士山―東京のゴールデンルートで、東京と箱根、東京と北海道という組み合わせも少なくない。
欧州系医薬品メーカーの中国法人が今年1月に実施したインセンティブ旅行は、北京など各地から総計580人が訪日。一堂がそろい東京でミーティングとパーティーを行ったほか(1)箱根―石和―御殿場(2)TDR―都内―御殿場(3)京都―奈良―大阪(4)洞爺湖―小樽―札幌の4班で日本観光を楽しんだ。
鈴木さんはこうした事例を紹介したものの誘致の方法として、直接顧客にアプローチできないことが悩みとした。「当たり前のことですが、中国のインセンティブ専門旅行コンサル会社が顧客をガードし我々が直接、企業などに近づけない」。そのため上海事務所では、日系広告代理店と組みDMなどを活用したダイレクトマーケティングに取り組み始めた。
また、中国からのインセンティブ誘致において4つの課題を挙げた。1つは、シンガポールなどライバル国・都市に比べて予算が割高になる価格面のこと。2つめに「中国人団体客は空港でバナーを持った出迎えを非常に求めます。安全面などの課題はあるかもしれませんが、いかに臨機応変にできるかです」。
さらに3つ目には「MICEに関して適切なビザがありません。全員同一行動を強いる団体ビザでは対応しきれない」とし、「コンベンションビューローなど日本の受入側から、ぜひ招聘状を出してください。そうすると短期商用ビザで対応できます」とアドバイスした。ビザに関しては、インセンティブ旅行ビザの創設も訴えた。
4つ目は、インセンティブの誘致にとって「地域のブランド価値のアップ」は不可欠として「自分の地域の売りは何でしょうか。そして特別なおもてなしプログラムを開発してください」などと話した。
このあと、閉会のあいさつに立った観光庁の溝畑宏長官は「日本の観光資源を十分に生かし、官民挙げてMICEを誘致していきましょう」と呼びかけた。
会場には、全国各地のコンベンションビューローやコンベンション施設30が出展し商談会も行われた。
MICE(マイス)とは
Meeting、Incentive、Convention、Exhibitionの4つの頭文字をとった造語。ミーティングは企業の研修やセミナーなどを指し、インセンティブは報奨旅行や視察と解釈されることが多い。コンベンションは国際的な大会や学術会議、エキシビションは見本市や展示会を意味する。日本は、国際会議の誘致数で世界ベスト10に入っているが、観光庁ではMICEの国内での浸透度は低いとして、APECやCOP10が開催される今年を「MICE元年」とし4つの分野全体の推進を図っている。