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2011年の観光業界を占う 14人が一字で表す「観」字検定(3)

まず、現状を分析して観光業界を表現したのが井門さんの「空」。海外については、空を飛び交う"ドンパチ"に不安を示しながらも「円高で海外へ飛び立つ人は多い」と期待感を示した。

国際観光に追い風 共感共創の時代へ

一方で国内は「週末への需要集中が進み、平日は『空』の字が悲しい」。だが、仏教の教えでは「空」は「未来へと向かう無限のエネルギー」を指すそうで「国内旅行改革に力が注がれることを期待したい」とエールを送る。

インバウンド・アウトバウンドは今年も業界浮揚の鍵を握る。観光庁が訪日客3千万人プログラムを立ち上げ、国を挙げての取り組みが本格化してきた。観光立国を標ぼうする以上、前進しかない。

池田さんは海からの視点で、「クルーズが東アジアで活況を呈しそう。中国起点の定点定期クルーズが日本に来襲、さらに日本起点のクルーズも定着し東アジアの国々へ」。いよいよ日本のクルーズ市場も拡大へ転じると予想する。

高橋さんは「羽田空港のハブ化がきっかけでイン、アウトともに国際観光が活発化する」。日本と海外をつなぐキャリアの充実は国際観光発展に欠かせない材料だ。

一方、国内観光の活性化は都会、地方、そして旅行業にとって大きな願い。今年の注目は、そしてなすべきことはなんだろう。

奇しくも国内情報を扱うメディア担当者2人の意見が鉄道関係で一致した。昨年12月の東北新幹線に続き、3月には九州新幹線も全通。名古屋にも「リニア・鉄道館」がオープン予定と話題が続き、名古さんは「鉄チャン回帰か」と期待を寄せる。

玉置さんは、博多駅と大阪駅のリニューアルオープンを挙げ「大がかりな商業施設に生まれ変わるのは過去に名古屋、京都、札幌で成功したパターン。閉塞気味の今年のトレンドになる」と断言。

井村さんは、現代の消費者目線から旅のトレンドを探る。「車は軽自動車、海外は格安航空会社(LCC)という手軽な旅が売れそう。不景気なので、休暇をとらずにいける海外、ちょっと時間ができたから安い温泉宿という感じじゃないでしょうか」と指摘する。最後に「気の張らない旅がいいなあ」。

心に根ざし観光再生を

では、その観光客の受け皿である宿泊施設からはそのあり方を。小原さんは「観光地や温泉地、旅館ホテルは『真』の姿に戻るべき。低料金施設と競争できる真の経営を」と訴える。

「地域や行政、顧客など個々の思惑を超え、相手の立場を察する優しさが活路を拓く」とは永山さん。これに同調するように、市場研究に携わる久保田さんも「共感、共創。ウェブ社会で新しいつながり方が生まれる中、サービスもコンテンツも、提供者と利用者が一緒につくっていく時代」、さらに松坂さんも「事態急変が当たり前の世の中で、相手の意思を読み取るなど慮(おもんぱか)ることに徹するしかない」。まさに変革。変わる時代に合わせる必要性は重みを増している。

最後に、やっぱりこれが根幹とばかりに観光の総論を語る意見。観光立国には理念と行動が大事だ。橋爪さんは、今年は日本の観光がこれまでの「量」に加え「質」を追う段階に入る年と説く。

「10年後、真の観光立国であるためには、入込客数など量に一喜一憂するだけでは足りない。戦略性を持ち国際観光を伸ばしながら、観光の本質にこだわり始めなければならない」。

李さんは「バーゲンセールのような『一時消費の一国迎合』だけでは陳腐化する。各地域が『心の鏡』で自己を映し、身の丈にあった観光対応が必要」、山田さんは「ターゲットを定め、そのマーケットに対し的確なサービスを提供し、お客の心に的中させること」と進言する。

丁野さんは「観光は経済である前に文化行為。旅先で出会った人の恩に親切で返すという恩返しの風土づくりの原点に立ち返るべき」。観光再生のキーワードは、やはり人の心かもしれない。

(トラベルニュースat 11年1月1日号)

2011年の観光業界を占う 14人が一字で表す「観」字検定(4)に続く

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