旅行業革新への挑戦 JATA経営フォーラム(1) タビマエ・ナカ・アトの価値とは
JATA(日本旅行業協会、田川博己会長)が主催するJATA経営フォーラム2019が2月21日、東京・六本木アカデミーヒルズで開かれた。今年のテーマは「旅行業革新への挑戦(トライ)」。基調講演を「AIVS教科書が読めない子どもたち」の著者で、国立情報学研究所教授の新井紀子さんが行った後、「カスタマージャーニー(タビマエ・ナカ・アト)から考える新たな価値づくり」など、4つのテーマで分科会が開かれた。
「地域の魅力のショーケースとしての役割が旅館にはある」
分科会は(1)優秀な女性人材を逃すな(2)テクノロジーが変える経営とツーリズムマーケット(3)中堅旅行会社トップ対談「これからの旅行業経営」(4)カスタマージャーニー(タビマエ・ナカ・アト)から考える新たな価値づくり−の4つが同時刻、別会場で行われた。
このうち旅行者のタビマエ・ナカ・アト、それぞれの接点をどうつくり、カスタマーになってもらうかを考えた分科会では、鶴雅リゾート(北海道)の大西希常務、リクルートライフスタイルじゃらんリサーチセンターの沢登次彦センター長、トリップアドバイザーの牧野友衛社長がパネリストを務めた。
牧野さんは、トリップアドバイザーが昨秋行った大幅なリニューアルはタビマエの使い勝手もテーマだったことを紹介し「例えば京都観光で行くべき20カ所は掲載していても、京都ってどんなところ、が伝えられていなかった」。リニューアルでは、こうした説明を加えたほか、マップに訪問場所の印を付けたり旅程をつくれるようにした。
沢登さんは「タビナカの情報が、現地での行動に大きな影響を与えている」と指摘する。訪問する観光施設の決め手になったり、予定になかったスポーツ観戦につながることもある。2022年には日本人と訪日旅行者の総宿泊数が逆転するとの見方を示し「外国人向けの体験コンテンツが観光の主役になる」と予想する。
北海道の13カ所で宿泊施設を運営する鶴雅リゾートの大西さんは「宿泊業のタビマエは、施設をつくるところから始まっています。どんな宿で誰に来てほしいのか、どのように時間を過ごしてもらうのか。でも、想定は当たらないことが多いです」と話す。
ただ、郷土力をテーマにした施設をつくることは決めている。「和の追求では歴史ある本州の旅館には勝てません。アイヌ文化やオホーツク文化といった北海道の文化を意識しています。地域の魅力のショーケースとしての役割が旅館にはあると思っています」
最後に、会場からの質問に牧野さんは「ネットでしか旅行の予約をしたことがないデジタルネイティブの世代は、旅行会社とどう付き合っていいか分からない。今後はネットとオフラインの組み合わせが増えるかもしれません。例えば、アップルショップやイケアのように」と答えていた。
(トラベルニュースat 19年3月25日号)
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