島の観光会議 島根県隠岐・海士町で開催(1) 田端観光庁長官が講演
島根県隠岐の海士町で7月7日、観光庁の田端浩長官らを招いた「島の観光会議〜地域における、これからの観光の役割とは〜」が開かれた。若い移住者が増え、地域づくりで先進地として知られる海士町。会議は、観光を基軸にしたさらなる町の活性化、隠岐全体に観光による効果を波及する場として設定した。田端長官の基調講演、観光カリスマの山田桂一郎さんの事例報告、パネルディスカッションなどが行われた。海士町および隠岐の観光事業者らが参加した。
観光で地域経済を循環
会議の冒頭、主催者を代表してあいさつした海士町の大江和彦町長が、町の現状と今後の展望について、こう話した。
「今年、海士町は町制施行50周年を迎えました。この15年間は、一次産業の再興という一点突破に挑戦し、島内外との交流を積極的に行い、定住人口の増大にもつながりました。しかし一方で、RESAS(地域経済分析システム)からもデータとして浮き彫りになっているのが、地域内から地域外へとお金が流出していることです。いわゆる地域内経済の循環率が他町村に比べても悪い。そのため地域経済の活力を持たせるため、観光業、つまり海士町観光協会で様々な取り組みを展開しています」とし、島で稼いだお金が島外に出ていってしまっている現状を課題に挙げた。
そのため大江町長は「離島観光の要諦は宿泊業にある」と述べ、島を代表する宿泊施設マリンポート海士の改修事業を進めているとした。「地域の稼ぐ力をどうすれば発揮できるのか。今日の会議をきっかけに、我々が心ひとつにして海士、隠岐地域が目指すべき姿を明らかにしてまい進していきます」と語った。
「これからの観光が担う、地域の希望」と題し基調講演を行った田端長官は「山田さんらに気仙沼でナンパされ、今日になりました」と、海士を訪れることになったエピソードから話し始めた。
田端長官は、人口減少の中で観光の役割が高まっていることを強調。「定住人口の減少に伴う経済の縮小は、海外からのインバウンドで補うのが基本的な考え方」とし、観光による生産波及効果は54兆円に達していると紹介した。また、インバウンドを輸出と捉えた場合、すでに電子機器を超えた額を生じさせていることも伝えた。
日本が観光先進国となるポテンシャルとして気候、自然、食、文化の4要素がそろい「世界でも稀な存在」と強調。反面、4要素がそろっていることで何かに特化しきれていないところが課題と指摘。「アメリカは、自然に特化し国立公園の利活用に徹底しています。日本は環境保全に重きを置き、そこまで至っていません」と話し、隠岐でも自然を利活用した資源の磨き上げ、コト消費につなげる取り組みが必要だと説いた。
田端長官は、相互交流もキーワードに挙げ、地方空港の国際化を進めていく考えを示した。それに伴ったDMOによる着地整備も行うことでインバウンドはまだまだ伸びる余地があるとし「皆さんが地域の価値を再発見することが重要です」。
(トラベルニュースat 19年7月25日暑中号)
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