四字熟語で2020年の観光を占う(3) 運散霧縄・規制酣和
宴たけなわの20年 次の一手
【運散霧縄】は、山田さんの「運」、松坂さんの「縄」から、もろ手を挙げてばかりではいられない20年への警句。雲や霧が消えてしまうように、東京オリンピック・パラリンピックを雲散霧消させてはならない。
山田さんは「昨年のラグビーW杯、今年の東京オリンピック・パラリンピックで運動の気運が高まっているのは間違いありません。日本のスポーツツーリズム機運をも高めていくきっかけになってほしいと願っています」という傍らで「東京オリ・パラはこれからの日本のインバウンドの命運を握っています。これまで順調に伸びてきたものの国の掲げる訪日外国人旅行者数4千万人が達成するかどうか、仮に達しなかった場合は施策を見直すことも考えるべきでしょう」と釘をさす。
松坂さんは、昨年の日韓関係の影響で水を差されたインバウンド景気、豪雨被害、首里城の焼失と続き「経営とは禍福があざなえる縄の如し」と警鐘を鳴らす。
「今年も五輪などで華やかに見えて、実はもっと深刻な事態が進行していたりする年になるのではないか。短絡的な『戦術』(インバウンドとか)だけにうつつをぬかしていると自縄自縛になって次の時代に生き残れませんぞ」と指摘する。
2020年を占う観字でつくる四字熟語の最後は【規制酣和】。井門さんの「酣(かん)」、藤田さんの「和」から。
井門さんが選んだ酣は目にする機会の少ない字だが、訓読みでは「たけなわ」。「はい、宴もたけなわ、そろそろ中締めの雰囲気の2020年」とジャブを飛ばす。「社会では50年間仕切っていただいた団塊の世代から40代への世代交代」「経済では成長一辺倒の資本主義の宴も酣。定常経済化の初期であるシェアエコノミーが本格化していく」と、これまでの主役たちの中座を促す。
さらに語を継いで「高級外資ホテル50軒なんて夢のまた夢。インバウンドの宴も酣。周辺国の経済停滞とともに定常化に向かいます。そして、政治面も酣ですね。米国も日本も」と、今年が大転換の始まりの年として予測する。
藤田さんも、広義な意味で転換期を予言。それを藤田さんは、宿を通してこう表した。「激動する現代社会だからこそ、微動だにしない本質的な価値が一層求められる時代。しかし、衣食住のすべてを提供する宿が、すべてに本物を提供しようとすれば、そのコストも青天井になってしまう。そこで必要なのが、バランス感覚。様々な要素が水準以上に揃うことで、シナジー効果が発揮され満足できる」。
さらに「流行語大賞になった『ワンチーム』のように、総合力で勝負するのは日本のお家芸。短所の改善と長所を伸ばすことばかりを近視眼的に考えるだけでなく、全体的なバランスにも目を向けていただきたい」と、日本人が古来大切にしてきた「和」への回帰を20年に促す。
「さあ、ステージでは最後の出し物。この夏を楽しみましょう!」と井門さんに促され、何となく息苦しかった規制とおサラバし「中締めの後の出番」に備えよう。
(トラベルニュースat 20年1月1日号)
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