“石川モデル”誕生秘話 石旅協・北会長と全旅連・多田会長が対談(1) 県民割を地元事業者と県で推進
石川県では昨年、観光業界を支援することを目的に「泊まって応援! 県民限定宿泊割」を実施。県民が県内旅行をする際、1万5千円を上限に半額程度を県が補助するもので、開始早々大きな反響を呼んだ。全国の自治体が同様の宿泊割を行うなか、石川県は事業の取りまとめ窓口に石川県旅行業協会(石旅協)を選んだ。中小旅行会社でつくる業界団体が窓口を委託された事例は全国でも石川県だけ。しかも旅行会社を通してのみの予約受付で、宿泊施設の直販売を行わなかった。全国的に注目されたこの県民限定宿泊割に大きく関わる石旅協の北敏一会長(トラベルシティ)と、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長で石川県旅館ホテル生活衛生同業組合の多田計介理事長(ゆけむりの宿美湾荘)に話を聞いた。(2020年11月、金沢市の金沢ニューグランドホテルで)
3者の信頼関係から実現 中小旅行社の認知高める
―県民限定宿泊割が実施されるなか、多くの地方自治体は知事が認可した地元の中小旅行会社ではなく、東京が本社の大手旅行会社やオンライン・トラベル・エージェント(OTA)に窓口委託するところがほとんどでした。なぜ石旅協が取りまとめ窓口になれたのでしょうか。
多田 親しい間柄なのであえて北さんと呼ばせていただきますが、石旅協が窓口になったのは、まずは北さんの人柄です。それに加えて普段から石旅協と我々旅館ホテル、県との間が信頼関係で結ばれていたからです。これに尽きると思います。
県民限定宿泊割を行うので旅行会社と宿泊施設、県と協力してやりましょうと言って、すぐにできるわけがありません。これまでの長い信頼関係を結んできた歴史があってのことです。

石川県旅館ホテル組合の多田理事長(右)と
石川県旅行業協会の北会長ががっちり握手
北 とはいっても旅館ホテルはともかく、県との間にはそんなに長い歴史があるわけではありません。県は北陸新幹線金沢開業で、これまで東京へのドル箱路線を持っていた小松空港の利用促進を考えなくてはならなくなりました。
そこで県は小松空港から台湾へのチャーター便を飛ばしたいと考えて、JATA(日本旅行業協会)会員へ打診したそうなのですが、受けてくれる旅行会社がなく、私どもの旅行業協会へ話がきました。北陸新幹線が金沢まで延伸開業する前の話です。
我々旅行業協会会員が得意とするのは、海外ではなく国内旅行です。私の会社も含めてチャーター便を飛ばしたことのある旅行会社なんてありません。
それでも私の頭の中では「受けよう」と即断していました。というのも私が全国旅行業協会の石川県支部長と石川県旅行業協会の会長になった際、県庁へ行くとさすがに観光課の人たちは支部と協会のことは知っていましたが、他の部や課に行っても「あなたはどこの誰?」といった感じでショックでした。50年の歴史があるのに、存在を知られていないことに驚いたわけです。
理事会を開き、チャーター便を受けるかどうかを話し合った際、「50年経っても我々の組織は認知されていないが、県からの依頼である今回の事業を受けることで我々の存在を知らしめることになる」と訴えました。
失敗したら誰が責任を取るのか、といった声も一部ではありましたが「“言い出しっぺ”である私が責任を取る」ということで、理事の皆さんの賛同を得ました。
(トラベルニュースat 21年1月25日号)
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