“石川モデル”誕生秘話 石旅協・北会長と全旅連・多田会長が対談(2) 旅館組合も全幅の信頼
会員のマンパワー発揮
北 団結力のある協会ですから、決まってしまえば、皆さんやったこともない外国へのチャーター便の集客に動いてくれて、最初の年は1便の予定が3便を運航できるほど集客しました。1便あたり270席を3便ですから810人を集めることができました。初便から6年目の2020年まで、毎年1便のチャーター便を続けています。
チャーター便事業を受けたことをきっかけに、知事には協会の新年互礼会に来ていただけるよう働きかけ、今ではよほどの公務がない限りお越しいただけるようになりました。
多田 チャーター便だけでなく、北陸新幹線金沢開業に合わせ着地型旅行商品を造ったり、石川県の事業に積極的にかかわってこられたこその結果だと思いますね。
それと窓口になるにはJATA、ANTA非会員も受け入れられた。正直なところ、非会員は受け入れたくなかったと思うんですが、県知事登録で認可を受けている以上、行政の立場になると受け入れざるを得ません。その点も配慮された対応だったと思います。
北 非会員といっても同業ですし、コロナ禍で苦しんでいるのは我々と同じです。地元だし相手の顔も見えるので、そこで線引きする必要もないと考えました。
―Go Toトラベルをはじめ、各地の宿泊割は宿泊施設の直販売が重視されているような傾向があるように思います。直販売がなかったのは全国でも石川県だけだったのではないでしょうか。旅行業協会が窓口になり直販できないことが決まった時、各施設から反対はなかったのですか。
多田 なかったですね。もともと旅行業協会とは、受入施設でつくる協力会と太いパイプでつながっています。石川県の場合は旅行業協会加盟の旅行会社から地元施設への送客比率が高いので旅行会社からの送客には安心感があるんです。
県内割で地元の旅行会社が仕切ったケースもありますが、送客ができず、あとで問題になったことを聞いています。その点石川県の場合は実績があるし、仮に何か問題が起こっても北さんの人柄もよく知っていて、対処できると思いました。ほかの旅館の人たちも私と同じ考えだったのではないでしょうか。
とにかく県内の観光業を救済するため、GoToトラベルキャンペーンの開始前に行うことを目的とした県内割なんです。キャンペーンが始まる7月22日につなぐためのものですから、手続きに手間取っていてはスタートできません。1日でも早くスタートさせるという意味では、知事の頭の中には旅行業のプロ集団である旅行業協会のことが念頭にあったのかもしれません。
北 当初は6月20日から始まる予定で準備を進めていましたが、知事から「それまで待てない。6月1日から始める」という号令が出ました。いくらなんでも無理なので8日にしていただきましたが、18日に導入予定だったシステムが間に合わず、申し込みはすべてファクスで、マンパワーで乗り切りました。
―結局、県内割ではどれくらいの取り扱いがあったのですか。
北 当初、割引額の予算は4億円でした。あまりにも多くの利用があり事業費の追加補正が行われて最終的には16億7490万円となり、宿泊者数は14万9356人。旅行取扱額は38億4715万円になりました。
多田 よく売りましたね。この販売力があるから知事も旅行業協会を認め、信頼するんですね。だからこそ我々協力会、石川県旅館組合としても、全幅の信頼感を持っておつきあいさせていただいています。
北 とはいっても、最初は募集型でないとダメだと言われたんですよ。しかし旅行業協会の会員は第3種登録が多く、募集型は販売できないところもあるんですね。それでは窓口を担当する意味がないと、ご意見を差しあげましたら募集型でも手配旅行でもOKということになりました。その分、会員は一生懸命販売してくれました。
(トラベルニュースat 21年1月25日号)
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