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観光業界の未来を紡ぐ 鈴木治彦vs星永重・全旅連青年部部長対談(2) 踏襲と変革のバランス

新しいものを取り入れて、次の世代も考えて

―以前から、依存体質を変えたいとも話していましたね。

鈴木 奥津荘は直予約が74―75%で、OTAが20数%でやっています。規模が小さいからできると言われれば、そうかもしれないのですが、依存からの脱却はずっと自分の頭の中にありました。完全に脱却ということではありませんが。

 自社がどういうツールを使ってお客様を集めたいんだと自分の意志で選べる状態をつくらないといけません。選べないから頼るというのが依存。それが旅行会社であれ、OTAであれ、そこに頼らざるを得ないということではなくて、いくつかツールがあって、うちはこれで集めると選択できる世の中にしていかないといけない、ということを治さんは仰っているんです。僕も、まったくその通りだと思います。観光業界全体が変わっていかないと。

鈴木 バランスが必要です。前に進み過ぎ、走り過ぎも危険を伴うことだと思います。

今、青年部で労務管理を改善していこうという事業を始めています。従業員のシフト作成から労務管理、賃金台帳、年末調整まで一発でできるシステムを入れようと考えています。

例えば、うちの若女将と女将は30歳の開きがあるのですが、女将のやっていることを引き継いで、財務や労務を同じやり方でやっています。それに毎月30時間を費やすのは、自分から見たら無駄。2時間で終わらせれば、あと28時間はお客様の前に出たり、スタッフの教育をしたり、外部の人と会ったりとかいろんなことができるはずです。2人は今までのやり方が慣れているから、このままでいいと言うんですが、下の世代にたいへんな迷惑を掛けることになると伝えています。

ひとつ前の世代から、今の世代、次の世代にバトンタッチする時、この間に50年から60年の差が生じてしまう。ある程度は前の世代がやっていたことを踏襲しながらも、前に進むためには否定もしなければいけないことも出てくる。まさに青年部もそうだし、業界全体がそうだと思うんです。いま自分たちが楽をするのではなく、多少無理をしてリスクやマイナスがあったとしても5年先、10年先を考えてやるべきことだったら、今やるべきです。

鈴木治彦さん

「今芽が出なくても10年後は必ず芽が出ると信じてやれるなら、
ずっとやってほしい」と鈴木さん

 うちも、共有事項が皆で見られるようにチャットツールを入れてやりたいと提案したのですが、55歳を過ぎた人たちにすればチャット自体がすごいストレスなんですね。何だったらできる?と聞くと、ラインは娘とやっていると。で、ラインでやろうという話をしていました。

今ものすごく進むのが早い。ものがすごく変わっています。若い方と年配の方のちょうど中間を探っていく作業が結構ありますね。

鈴木 少し前までアウトソーシングと言って、専門の業者や分野の人たちに任せたのが流行った時期がありましたが、今はほとんどITで解決できます。もともと我々は労働生産性が低い業界と言われています。本来やるべき業務に費やさていない時間が一番の問題。

―それは宿泊業に限りませんよね。

 いきなり変えようとするのは難しいので、変えた後に「あ、この方がいい」と気づくぐらいがいい。先人が積み重ねてくれたいい部分がやっとわかることにもなります。最初は疑ってかかって、疑いながら変えていく。でも、あれ何か違うなと思ったら、もともとあるものに戻れば、両方を取り入れていいものにできる。産むときの苦しさが今一番わかる世代が青年部かもしれないですね。新しいものを取り入れて、次の世代も考えてやるという(笑)。

(トラベルニュースat 21年2月10日号)

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