震災10年、さらに挑戦 福島県旅館ホテル組合理事長・小井戸英典さん「コロナ禍で新しい価値を創る」(1)
東日本大震災から3月11日で10年を迎える。10年前の3月15日、福島県いわき湯本温泉・こいと旅館の小井戸英典さんに東京から電話で話を聞いた。東京電力福島第一原発の大規模事故による放射能拡散で、いわき市には屋内避難指示が出されている緊迫した状況の中、小井戸さんは「私はここに残る」。その後、同年5月に旅館を訪ねたのをはじめ、この10年の間に何度か取材でお会いする機会を得た。今は福島県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事長として福島の観光復興に取り組む小井戸さんに話を聞いた。
「あのころ」を振り返る
−3月15日に電話取材させていただきました。当時のことは、やはりよく覚えていますか。
いわき湯本温泉旅館組合の理事長をしていたこともありますが、全国から旅館に集まってくる救援物資を町内に配り歩く日々でした。旅館の1階フロアを物資の集配所にして、まちの若い人やまちづくりグループの人たち、避難せずに残った人が集まってきて勝手連的に活動していました。
電話が通じないなか、SNSで、行政も把握していない常磐地区内の独居老人や困窮者を確認しながら役割分担して動いていました。沿岸地域の水産加工会社は停電で冷凍庫が使えないから冷凍食品をなんとかできないかと地元FM放送で呼びかけがあり、旅館のトラックで冷凍食品をもらってきて、まち中で炊き出しをしたりしました。
3月20日を過ぎると、原発で作業する東電社員がビルの階段で寝泊まりしているという話を聞いて、旅館組合で作業員の宿泊受け入れを始めました。放射能汚染を心配する地元の人たちを不安にしないため、Jヴィレッジを中間点にして除染とスクリーニングを徹底してもらい、証明書を携行してもらっての受け入れでした。地元の飲食店の灯りを消さないようにとの思いもありました。
−当時高校生だった娘さん2人は今どうしていますか。
上の娘が昨年末に入籍しました。下の娘はアパホテルで副支配人をしています。都内にあるコロナ感染者の軽症者を受け入れているホテルで、療養者と直接接触する機会はないようですが、10年前に被災者だった家族が今、コロナで困っている人を受け入れているホテルに勤めているのは巡り合わせを感じます。
(トラベルニュースat 21年3月10日号)
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