新たな地平を開く 逆境下で挑む3氏(2) 山崎哲秀さん(アバンナット北極プロジェクト代表理事)
北極から地球を俯瞰する
1年の半分は北極圏で過ごす。しかも冬季。氷が安定するからだ。氷点下30度、40度は当たり前、丸1日中太陽が昇らない極夜の世界だ。
そんな暮らしを1989年からほぼ毎年繰り返してきた。植村直己さんに憧れて始めた、徒歩によるグリーンランド縦断の挑戦は惨敗。エスキモー民族の一つイヌイットの村で弟子入りし、犬ぞりを教えてもらった。
「人間界の際に暮らす先住民と、極限の自然界の境い目に生命力を感じました。自然との融合というか、生きている感覚を体感できる世界に魅了され続けています」
途中、南極地域観測隊に参加したこともある。同じく隊員として参加していた奥様に魅了されたが、南極は面白くなかった。たぶん人が暮らしていなかったからだ。
2007年、衝撃的なことが起こる。真冬に割れるはずのない氷が裂け、家族同様に苦楽をともにしていたエスキモー犬たちが流されてしまった。温暖化を実感した瞬間だった。と、同時期にイヌイットにも便利な生活がどんどん持ち込まれ、犬ぞりはスノーモービルに代わり、星空から得る情報がスマホに取って代わっていった…。
今は、世界のてっぺん(北極)から地球を観測する拠点の設置と、愛してやまないエスキモー文化を継承するのが夢。それが実現したら、遠征費を稼ぐためだけに過ごしていた日本を妻と子どもと旅しようと思う。
(トラベルニュースat 21年9月10日号)
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