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リアル○刀流に活路 紙面から選ぶ2021年観光番付(3) 観光イノベーション萌芽

時代の要請か 業界が変わる

 大関は「旅行業変革」と「TikTok宿出現」とした。これは、今年の新語・流行語大賞に選ばれた「リアル二刀流」じゃないけれど、観光業界も従来業務以外に活路を見い出すポジティブな番付と捉えたい。

 大手旅行会社の中間決算などを見ると、旅行業以外の収入が各社大幅に増えている。ワクチン接種センターの運用や地方創生関連事業、県内割のオペレーションなど国、自治体などからの受託事業が目立った。

 旅行業で培ってきたノウハウの証とみたいね。地方自治体と観光振興で包括連携を締結するというのも少なくなかった。中小旅行会社は顧客との関係性が強く、物販事業に取り組む会社や、リアル店舗を持つ強みを生かして異業種に乗り出すところもあった。

 在籍型出向という形で、地方創生の業務に就く事例も見られたね。

 番付上は別個に前頭筆頭としたけど「オンラインツアー」もその一つだろう。HISは2年間で参加者が15万人を突破したそうだし、JTBもオンラインツアーに力を入れてきたと話していた。テレビの旅番組みたいなものかなと想像しつつ、業界紙記者だけど参加したことがない。

 三重県の鳥羽ビューホテル花真珠がTikTok動画を発信していることも話題になった。リアル営業がままならない時期に、女将やスタッフがそろって踊る動画は確実にファンを獲得、売上アップにつなげた。

鳥羽ビューホテル花真珠

鳥羽ビューホテル花真珠のTikTok動画から

 和歌山県のホテルシーモアは、パブリックスペースを名実ともに地域に開放し、バブル期に言われた宿泊客を囲い込む大型旅館とは対照的。佐賀県の和多屋別荘もあえてこの時期にパブリックスペースを改装し、地元商品のセレクトショップや大規模な図書館をつくった。どちらもワーケーションの受入も積極的で、情報発信、宿づくりとも二刀流、三刀流が時代の要請なのかな。

 時期的に盛り上げに欠けていたかもしれないが、明るいニュースとして「世界遺産ダブル登録」を東関脇に挙げた。奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島が世界自然遺産に、北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産に選ばれた。

 平時だったら、もしかすると大挙して観光客が押しかけて…ということになっていたかもしれないが、さっきのSDGsの話で言えば、持続可能な資源の活用で良かったのでは。7月25日号第2部に、知床半島をカヤックで1周する記事を掲載したけれど、長い時間をかけて形成されてきた自然や文化とは謙虚に向き合いたい。

(トラベルニュースat 21年12月10日号)

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