“故郷さがし”が次のトレンド じゃらん宿泊旅行調査2022を読み解く(1) 回復傾向のなかに見える新市場
リクルート・じゃらんリサーチセンターが「じゃらん宿泊旅行調査2022」をまとめた。21年度(21年4月―22年3月)1年間に国内宿泊旅行を行った人の割合を示す宿泊旅行実施率は前年度比2・9ポイント増の34・1%と、微増ながら最低値だった20年度より上昇した。延べ宿泊数も同19・3%増の1億5138万人泊と回復傾向を示す。同センター長の沢登次彦さんの分析とポストコロナを見据えた戦略を交え、調査結果を紹介する。
地域の個性や強みを捉える旅行者
実宿泊旅行者数は20年度比8・6%増の3176万人、延べ宿泊旅行者数は同13・4%増の8231万人回。宿泊旅行実施率を性・年代別にみると、すべての層で前年より回復。なかでも20―34歳女性が4・8ポイント増、35―49歳女性が3・9ポイント増と女性を中心に上昇が目立ち、コロナ禍前には及ばないが旅行者が徐々に戻ってきているのがわかる。
旅行実施者の年間平均旅行回数は前年から0・11回増の2・59回、宿泊旅行1回あたりの平均宿泊数は前年から0・08泊減の1・83泊と、微増だがほぼ前年並み。沢登さんは「混雑を避け平日をうまく使う旅行が増えてきました。観光業界として閑散期対策を打ち出しやすいのでは」と分析する。
宿泊旅行費用総額は、同24・4%増の4兆6837億円。コロナ前の18年度の約8兆円超を考えると市場規模はいまだ回復していない。宿泊費は1兆4536億円で、全体シェアは31・0%。1回の旅行でかかった1人あたりの費用は5万6900円で、前年より5千円程度増加し、ややぜいたくな旅を志向する傾向だ。今後は「体験を増やすなど付加価値を増して単価を上げるチャンス」(沢登さん)。
同行者は1位が27・4%の「夫婦2人」、2位が20・1%の「一人旅」。一人旅は過去最高値となった。これは感染対策の影響で「近しい人、感染リスクを共有できる人との旅行が増えた」(同)。
都道府県別の延べ宿泊旅行者数は、東京都が647万人で1位に返り咲き。2位に昨年1位の北海道。次いで3位長野県、4位静岡県、5位大阪府、6位神奈川県、7位京都府、8位千葉県、9位福岡県、10位兵庫県。前年度低迷した都市圏の回復が目立つ。
県内旅行率は1位が前年度に続き北海道。5位長崎県、6位富山県、7位高知県は県内旅行率が前年度より上回る。県内旅行と県外旅行の件数の比較では前年度から県内旅行の件数は減らず、近隣旅行の需要は継続しながら県外への旅行が復活してきている。
「いわゆるマイクロツーリズムの満足度は県外旅行と変わりません。県内の人をロイヤルカスタマー化していくことで、地域の伸びしろにもっていけるのでは」(同)。
ポストコロナの旅行について沢登さんは「コロナ禍で内向きだった消費が人づきあい、趣味、余暇に転化します。地方の豊かでスローな生活への関心が高まっており、地域の個性や強みをキャッチしてくれるカスタマーは確実にいます」とし、現地の暮らしや文化に触れる「こころの故郷さがし」が国内旅行の新市場を形成すると見通す。
なお、宿泊旅行調査は4月に実施、7月12日に発表。有効回答数は1万4123件だった。
(トラベルニュースat 2022年7月25日号)
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