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福祉ではなく収益事業 京都でユニバーサルツーリズム推進(2) 先進的な宿づくりから学ぶ

バリアフリー、ユニバーサルデザインの両輪で価値向上

勝谷さんは、伊勢志摩エリアでバリアフリーの宿づくりに取り組んでいた旅館経営者と親しかった。ところが一緒に飲酒した翌日、その経営者が倒れ、障がいを持つ身になったことが17年前から現在も続く宿づくりに原点になったという。

なにわ一水の宿づくりの象徴的な存在が06年に行った食事処のオープン。従来の大宴会場を13室の食事処に改装した。それは「お客様と従業員両方に配慮した」もの。「従業員の動線をかえたことで、配膳や接客に要した歩行距離を1人720㍍短縮しました。高齢化が進む従業員にとって働きやすい環境になりました」とし、労働生産性の向上につなげた。

また客室もユニバーサルデザイン化を順次行っており、ベッドで寝ている時間が長い障がいを持つ客が楽しめるよう天井の意匠にこだわった客室や視覚弱者向けに大画面テレビを用意。食事も食物アレルギーやヴィーガンに対応した和食会席を提供し「フードバリアフリー」も進めたのをはじめ、松江市のありようが触れるだけでわかる触地図の設置やフロアごとに匂いを変えエレベータが何階に到着したかが分かることなどにも取り組んでいる。

勝谷さんは「バリアフリーは機能の向上、ユニバーサルデザインは情緒の向上で、両方に取り組むことで旅館の価値が上がりました」と話す。客室稼働率は90%を超え宿泊単価も倍増。さらに障がい者の旅行は、同行者を伴うので定員稼働率もアップし、予約リードタイムは平均100日になるという。「私たちの取り組みはボランティアではなく、しっかりとした経営、合理的な取り組みだと考えています」と伝えていた。

主催者の中村敦美さんは「個々の取り組みがまとまり、つながっていないのが京都の課題です。うちがハブになって、京都を旅行しやすい環境づくりができれば」とフォーラムの成果を実現する意欲を示していた。

(トラベルニュースat 2024年7月25日号)

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