四字熟語で2025年の観光を占う(3) 滞器万勢・枝葉待節
「節」目の年を「満」たす
【滞器万勢】 井門さんが「ウクライナ戦争では命が犠牲にされている。独裁者により若い命を失うことこそ人口減少時代における人類最大の危機だが、新しい命が生まれない日本も同類項」と指摘するほど人口減少は深刻だ。
「滞」を選んだ佐藤さんは「日本人の人口が減少したら▽国民一人あたりの旅行回数を増やす▽連泊を増やす▽外国人を多く受け入れる―これしか宿泊市場を確保する対策はない」と言い切る。
その対応として「地域は住むように過ごしてもらう、宿泊施設は一泊より楽しく滞在してもらった方がやり甲斐があるのではないか」と佐藤さん。連泊、滞在を増やすためのハードにとどまらない器づくりが地域、宿に求められている。
インバウンドについては言うまでもない。大都市圏は千客万来でオーバーツーリズムの状況だ。「勢」を選んだ井村さん。「外資系ホテルの出店の勢いには驚く」とし「マリオットホテルチェーンは道の駅にホテルを展開する、ヒルトンチェーンは一都市に違うブランド展開で様々な需要を取り込もうとする、ハイアットは旅館ブランドを立ち上げホテルビジネスに挑む迫力が違う」。
翻って日本勢は「インバウンドの勢いに押されて青息吐息でついてきているような感じ」とし、万博を機に日本の旅館ホテルも勢いをつけてほしいと期待する。橋爪さんがいう「万博特需を一過性にしない」ことが肝要だ。
【枝葉待節】 一方で「節」を選んだ山田さんは「2025年は21世紀の四半世紀とともに『昭和100年』でもある。平成でもなく、令和の時代にあっても経営者の多くの頭の中は『昭和100年』の人が多過ぎる」と嘆き「万博も昭和時代のような結果は望めない」と危惧する。
その上で山田さんは「節目の年であるからこそ、次代を見据えた経営が重要。竹や葦の節のように足下から一つひとつ基本を積み上げ、一方で木々の節のように枝を伸ばし、あらゆる可能性を見い出すべき。アンテナを立てネットワークを広げよう」と、枝葉が広がるのを待つのではなく自ら節を増やそうと説く。
「1970年大阪万博では、東海道新幹線を利用する団体旅行が一般化した。ただその後の冷え込みを懸念した国鉄は、新たな旅行ブームを生むべく閉幕1カ月後にディスカバー・ジャパン・キャンペーンを始めている」とし、今回も「新たな意欲的な観光振興策を立案することが早急に求められる」。山田さんがいう今回の万博が「悪いレガシーになる可能性」という芽を摘み、しっかりとしてしなやかな節を刻む年にして、令和の万博のレガシーを観光業界から生み出したい。
(トラベルニュースat 2025年1月1日号)
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