市場に風穴を開ける協業 全国新聞旅行協議会(1) 仙台で実務担当者会議
航空チャーター便やクルーズ船の共同販売、社内業務の生産性向上や雇用形態の改善…各社が自社の取り組みや強み、課題をつまびらかに開示、共有し、知恵を出し合う。そんな意欲的な会議が、全国の地方紙系列の旅行会社で組織する「全国新聞旅行協議会」の実務担当者全国会議。昨年12月、仙台市青葉区の河北新報社本館ホールに16社の約30人が集い2日間に渡って開かれた。実務担当者全国会議に初期から関わる神戸新聞旅行社の山田陽介さんの話も交えて、地域性も個性も業態も多種多様な旅行会社が自らの意思で定期的に集まり、仲間として旅行マーケットに風穴を開けていく取り組みを取材した。
腹を割って話す 新聞旅行社の強みを最大化
全国新聞旅行協議会は当初、各社の代表者が集まってゴルフなどを行う親睦会としてスタートしたという。それが17―18年前に西日本の会社を中心に部長、課長クラスの実務担当者が集まるようになった。どんな商品が売れ筋か、どんなシステムを使っていくら費用を支払っているか、新聞紙面の広告料金は?などなど「皆同じような課題、悩みを抱えています。でも商圏エリアがまったく被っていないので、腹を割って話せるんです」(山田さん)。
仙台で行われた会議でも同様。大阪・関西万博をどうするか話題になった。「バスが運転手ごと万博にもっていかれる」「ホテルの宿泊料金が倍近い」「募集でやりたいけど、まだ何も」「地元の建設業者から見積依頼はあるが」などの意見が飛び交う。すると「5月に高松から神戸のクルーズ客船チャーターの話がある」「神戸からは別の遊覧船を協議会でチャーターして万博会場へ行くのはどうか」と応じる。「では、この企画に乗る人?」。瞬く間に手が上がる。
次いで、カナダのユーコン準州で地元航空機をチャーターしてオーロラを観賞するツアーをしないか、という問いかけが出る。「雲上なのでオーロラ遭遇率はほぼ100%。高額商品になるが、他社と差別化できる。言い出しっぺだからうちがまとめるけど」と言うと、これまた「やる」「やる」と即応する。
また、地元行政から誘客事業を受託した会社は、自らランドオペレーターになって、添乗員も出して各社の商品化を促す。一定数集客できれば行政から報奨金が出ることも申し添えて…。またまた多くの手が上がる。一事が万事、この調子で会議はずんずん進んでいく。
山田さんは「皆で在庫を共有して仕入れ値やデータもすべて公開。催行後は集客数に応じて収益を分配します。私たちは『山分け方式』と呼んでいるのですが、代理店ではなく皆が主催者であり当事者だからこそできるやり方だと思っています」。
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