"旅館めし"改革 各地で進む新メニュー開発(2)
新メニューへの取り組みはさまざまだ。
地元食材、伝統生かし、独自の"物語性"を加味
新潟県松之山温泉は東京のフレンチシェフと共同で新たな郷土食をつくりあげたのをきっかけに、現在は「美味しい朝ごはんプロジェクト」として、全旅館が地元の食材を使った「山菜朝まんま」を出している。
東京からフレンチシェフを招いての取り組みは、群馬県みなかみ温泉郷も同じ。農産物や果物など、みなかみ町の素材が生きるフランス料理の可能性を試食会などで模索している。
旅館組合青年部主導の新たな食プロジェクトもある。長野県旅館組合青年部では今年10―12月に行われる信州DCにあわせ、信州の伝統食を合体させた新たな郷土食「まぁーず」を開発した。すでにまぁーず専用のHPも開設し、まぁーず料理25種類のレシピを、提供している旅館名とあわせて公開、「本物のまぁーずを食べに信州のおこしください」とアピールしている。
佐賀県旅館組合青年部では地元、有明産の一番摘みを使った高級佐賀海苔を朝食につける取り組みを昨年10月から開始した。当初、青年部員の宿30軒でスタートし、参加旅館は増加中だ。
山口勝也・佐賀県青年部長は「これまで高級海苔として大阪や東京で消費されていましたが、日本を代表する地元の食材を地元の旅館で食べられないのはおかしいと思い始めました」と話す。
出している海苔は、8切れサイズを3枚。「佐賀だからこそのおいしい朝」と胸を張って朝食に添えている。
同じ佐賀県の嬉野温泉では、旅館組合を中心に温泉湯どうふ振興協議会を立ち上げ、嬉野産の大豆で作った「嬉野温泉湯どうふ」をブランド化。各旅館で提供しているほか、毎年秋に湯どうふフェスタを開き、温泉地としての賑わいづくりにもつなげている。
食材側から旅館への働きかけで生まれた新たな旅館食もある。山梨県の穀物メーカー「はくばく」が後援する「麦とろごはんウィーク」は今年で7年目を迎える。6月12―20日までの9日間、全国12の温泉地の旅館で朝食か夕食に麦とろごはんが出される。
また、旅館単体での料理イノベーションも各地で取り組まれている。