"旅館めし"改革 各地で進む新メニュー開発(3)
新潟県十日町市・松之山温泉の旅館が新たなメニューづくりに取り組んだのは数年前。当時、東京の「コンラッド東京」の日本料理店「風花」料理長だった齋藤章雄さんを地元に招き、共同で開発したのが「棚田鍋」だった。
農家と連携
松之山温泉周辺にはいくつもの棚田スポットが点在し、多くの観光客が景観を楽しんでいる。その棚田米を使った鍋料理が棚田鍋で、松之山温泉の旅館で提供されることになった。
「美味しい朝ごはんプロジェクト」は、こうした取り組みの延長線上にあるものだが、食の開発にとどまらず地元の振興をテーマに据えているのが特徴だ。例えば、第1弾として今年1月から取り組んだ「とろろ朝まんま」。地元のジネンジョを使った朝食を、全旅館で提供した。全旅館で取り組むことで、地元生産者が一定の量を生産できる。
プロジェクトリーダーの1人、柳一成さん(ひなの宿千歳)は、「地元の観光素材は棚田であり、地域の人々の生活です。農家と連携し、元気になってもらうことで地域の生活も維持され、棚田も保全することができます」とプロジェクトが目指す一面について語る。
第2弾として5月からは「山菜朝まんま」がスタートした。地元食に欠かせない塩の子、酒かす、醤油の実、田舎味噌を掛け合わせたオリジナル味噌「まんまの味(み)」を各旅館が手づくりし、これをふき味噌仕立てにしたものを季節の山菜に絡め、焼き味噌料理として朝食に出している。
8月からは第3弾として夏野菜を使った「やたら朝まんま」を予定している。やたらと細かく刻んだ夏野菜の料理になるそうだ。
選べる会席
星野リゾートは、今年4月から運営を始めた静岡県・舘山寺温泉の花乃井で、会席料理の一部メニューに選択制を導入した。事前予約は必要なく夕食時にその場で選べるのが特徴で、同社グループでも初めての試みだ。
選択できるのは9つの献立のうち4つ。例えば揚げ物は、和風の「白魚けんちん揚げ・鱧粗引き揚げの取り合わせ」と洋風の「豚肉の温かいテリーヌ・ラベンダー風味ソース」のいずれかを選べ、煮物と台の物は3種類から選べる。デザートは和洋4種類を用意した。
同社が選択制料理を取り組むきっかけになったのは、軽井沢のホテルブレストンコートのブライダル料理。参列者が千差万別なブライダルでは残滓量が非常に多かった。そこで2006年から選択制料理を導入し、食べ残しの量の削減に成功。
花乃井ではスタートしてから1カ月少しだが、家族やグループ客でも1人ずつ自由に選べ好評だという。今後、選択率の増減などのデータを蓄積し、仕入れ量やメニューづくりに生かしていく。