地球温暖化 観光業界の対策は(4)
まず、外車からプリウスに乗り換えた。旅館観月の長谷川哲史さんがエコロジーに関心を持つようになってから、まだ5年と経っていない。地元の法人会で友人から「エコツアーって知ってる」と尋ねられたのがきっかけだった。
風の力で点く気持ちいい灯り 旅館観月
「なにそれって、知らなかったんですよ」。それまではゴミの分別にさえ興味がなかった。
法人会の仲間によるエコ講義に開眼し、好きだった外車からプリウスに乗り換えてみた。「そうしたら、なにか気持ちよかった。地球にいいことはなんとなく気持ちいいらしいです」。
ちょうどそのころ、東京都ホテル旅館組合青年部の部長に就任し、所信でも環境に対する配慮=エコロジーの推進を強く掲げた。環境に配慮できない企業は、これから先、生き残っていけないと。
自身、旅館の屋上に小型の風力発電機と太陽光発電パネルを設置し、連泊客の客室には日本語と英語の「シーツを取り替えないでいいです」カードを置いた。協力してくれた客には綿100%のエコバッグをプレゼントしている。価格は、ちょうどクリーニング代程度だ。
東京都大田区、東急池上線千鳥町駅から歩いて2分。道路に面したコンクリート打ちっぱなしの新館を過ぎると樹木で鬱蒼とした旅館の入口が見える。都心で見る風景としては、かなりインパクトがある。小さな川と赤い橋を渡って、フロントは奥にある。
この雰囲気を気に入ってか、外国人客は月1500人と全宿泊者の過半数を超える。
風力発電機はゼファー製で、東京都の観光シティセールスでヨーロッパを訪問した時に見つけた。新館の屋上に上がると直径1メートルほどの3枚羽がゆっくりと回転していた。風車の下には小さな太陽光発電パネルがあった。
将来は余った分を売電に回してと構想は膨らんだが「実際には、旅館で使っている全エネルギーの千分の一にも足りていません。賄っているのは、小さなLED2つだけ」。
ただ、小型風力発電機も、LEDも、環境に負荷の少なそうな綿のエコバッグも、今ほど環境グッズの情報量が多くない時に全部、自分で探してきた。
庭の一角にある東屋に風力電気は引かれている。「風力で点いている灯りもいいでしょ」。
残念なのは、燃料電池の実証実験に施設の条件が合わなかったこと。それから、病気のせいで、その後の温暖化対策が滞っていることも。
長谷川さんと別れて、駅への帰り道、教えられたようにふり返ると、行きには気づかなかった小さな風力発電機が、屋上で回っているのが見えた。
(トラベルニュースat 08年6月10日号)