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観光庁が発足 訪日外客2千万人を目標に(4)

都内のホテルで開かれた観光立国を推進する会には観光関係者を中心に1500人が出席した。出席者に観光庁への期待について聞くと、外需(外国人旅行者の拡大)に対する期待の声以上に、地域づくりや地方行政への波及効果に期待するコメントが目立った。

観光庁に期待する 「地域づくりに波及を」

加賀屋(石川県和倉温泉)会長でJTB協定旅館ホテル連盟会長の小田禎彦さんのコメントからは、これまで長い時間にわたって現場で観光に取り組んできた旅館業界を代弁するような気持ちが伝わってきた。

「出席者を見渡せば、見たことのない人が多いですね。観光の裾野の広さをパーティー出席者からも見て取れます。宿屋の親父だけが観光を考えていると思っていてはいけないということです。ただ、努力しないで観光による恩恵だけを受けるのでは困ります。しっかり観光が根付くような義務も果たしてもらいたい」

日本の宿古窯(山形県かみのやま温泉)社長で全旅連会長の佐藤信幸さんは、特徴ある地域づくりを支援してほしいと要望する。

「全旅連会長として全国を見てまわると、いかに地方が疲弊しているかが分かります。今までのありきたりの観光地や温泉地にはお客様が来なくなっています。地域にはグランドデザインや観光振興計画がありますが、ほとんどが金太郎アメ的でマンネリ化しています。観光庁では、それらを見直すような個性ある地域づくりを支援してほしい」

ちょうど10年前、全旅連青年部は、観光立国を推進する会と同じ、当時の赤坂プリンスホテルで創立30周年記念式典を開いた。式典のメーンテーマは観光庁の創設。当時、青年部長だったホテルかずさや(東京都中央区)社長の工藤哲夫さんが初代観光庁長官に扮し、ビデオで青年部員に観光振興をアピールした。パーティー会場で工藤さんにも聞いた。

「あのときは、観光庁の創設は2010年の10月1日の想定でした。ですから2年早く現実になったということになります。ドリーム・カム・トゥルーです。当時、長官として話したのは他省庁にまたがる観光関連行政をまとめる組織が必要だということでした。ビザ、入管、鉄道、飲食、すべて観光に関係がありますから。実際に商売するのは私たちですが、観光庁には、そうしたまとめ役として期待しています」

旅館浅草指月(東京・浅草)社長で外国人旅行者を数多く受け入れるジャパニーズイン・グループ会長の飛田克夫さんからは、厳しい注文が聞かれた。

「2000万人に向けて、実働部隊として重要な役割を担うのがJNTO、つまり日本政府観光局です。しかし、09年度の予算要求でも、それに見合った予算措置が見られないことを危惧しています。海外に足場を持っているJNTOに頼らずに十分に情報を収集して、プロモーションをすることができるんでしょうか」

伝承千年の宿ホテル佐勘(宮城県秋保温泉)社長の佐藤勘三郎さんは、新しい観光のあり方に道筋をつけてほしいと要望した。

「新しい観光のあり方や方法論を示していただきたいと思います。例えば、泊食分離や滞在型観光、体験観光などがありますが、ビジネスになるには時間がかかりそうですし、果たして、その方法論が正しいかどうかの実証実験も必要です。事業者が、客層としてボリュームがない分野にもトライアルできるような仕組みづくりに期待しています」

最後に鬼怒川グランドホテル夢の季(栃木県鬼怒川温泉)社長で、国交省からようこそジャパン大使に任命されている波木恵美さんは、地方行政への観光庁効果に期待する。

「観光産業だけでなく、他の産業も含めて一丸となって観光に取り組める環境ができたことに期待しています。国の行政が縦割りから横断的になったのを機に、県や市の行政も横断的に、スピード感のある対応に変わってほしいですね」

(トラベルニュースat 08年10月10日号)

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