川西修会長・川西孝彦社長に聞く(2) お米を食べる価値創出/幸南食糧特集
量から質へ朝食に醍醐味
−6次産業化に取り組まれたいきさつを教えてください。
川西会長 日本の農業と言えばお米です。大正から昭和、平成と続く中でお米は国の管理下から自由化され、流通制度がどんどん変わってきました。日本の農業はお米を作ることに関してはプロですが、作ったお米を売るという点では農協に持っていけば全国流通してもらえ、作ってさえいれば売れようが売れまいが気にしなくてもよかった時代が長く続きました。
しかしお米が自由化の時代になり、日本の農業を取り巻く環境は激変しました。農家は重機の支払いや必要経費などのコスト管理を行う「経営」を意識しなければならない時代に入りました。
農業を取り巻く環境が変わる中で、農業に携わる当社ができることを考えた時、お米だけでなく農産物を生産する農家や地域を活性化し日本の農業を元気にする、6次産業化のプランナーを目指すべきだと気づきました。農産物を大都市への流通マーケットに広げるお手伝いという取り組みは時代に合ったのか、全国から多くのオファーがあります。
−観光業へのご意見をお聞かせください。
川西会長 量から質へと言われる中で観光業、旅館業もこれまでのやり方から変換すべき時代に入っているのは間違いないと思います。新型コロナウイルス感染症が拡大しているからということではなく、時代は大きな変換期を迎えています。
しかしながら、いまだに旅館の宴会では、食べもしない料理が多く出ているところもあります。こういうやり方は、量から質が求められている時代にはもう終わっています。地域で獲れたものを3品か4品出し、感動した、感激したとか、また来たい、と思ってもらえるようなことを提供できないのでしょうか。
先日、大阪の泉南の漁港に行きました。「いらっしゃい、いらっしゃい」と魚介類を販売する呼び込みを行っているのですが、人は集まっていません。ところが奥の呼び込みの店には人だかりができています。よく見ると呼び込む横でお客様から頼まれた通りに魚を調理して販売していました。この店は魚を売るだけではなく調理して売るという“一工夫”していました。他店と違う売り方に気づき、お客様に支持されているわけです。
テレビで見たのですが、ある店が茹でたタコをそのまま出して、お客様が自分でフォークとナイフを使って切り、造りにして食べていました。タコを自分で調理体験して食べる、という発想は旅館の人たちにも見習ってほしいと思いました。
川西社長 旅館の醍醐味は朝ごはんだと思っています。おいしいごはんとおいしい地域の総菜、つけものをアピールするのも必要ではないでしょうか。コロナ禍で密を避けなければならず、人を介したアピールはむずかしいかもしれませんが、黙っていても人は来てくれません。
動画1分間は文字で180万文字、ウェブページで3600枚分に相当すると言われるぐらい圧倒的な情報量を持っていますから、動画を駆使して全国の元気な旅館や地域の情報を伝えてほしいと思います。
川西会長 社長から朝ごはんの話が出ましたが旅館に泊まる楽しみの一つは料理です。特に美味しいお米を食べたい。しかし現実は各地域には美味しいお米があるのに、なかなか味わうことができない。コストの関係で美味しいごはんを提供できないのかもしれませんが、いくら高いお米を使ってもお茶碗1杯7円以上の差はありません。
旅館だと大量にお米を消費するため、お茶碗1杯7円は高いと思われるかもしれませんが、ごはんが美味しかったよね、なぜこの旅館のごはんはこんなに美味しいのだろう、と言われる方が旅館にとっては大きなプラス効果になると思います。
汁物も味噌汁ではなくすまし汁を出しているところも疑問です。出汁にこだわったすまし汁を出しているところもあるかもしれませんが、きちんとした味噌汁は手間がかります。今のお客様はどのような味噌汁、すまし汁を出しているのか見抜きますので、その点はしっかりと抑えていく必要があります。
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